家紋の分類

家紋のモチーフによる分類

家紋にはさまざまな種類があり、それらはいくつかの形に分類されます。

【天文・地文紋】(約12種)
日、月、星、雲、霞、雪、山、水、波、露、他などで、日は「日の丸」「日足」・・・ 月は「三日月」「半月」「満月」・・・などそれぞれがさらに細かく分かれています。 単体より違うモチーフと一緒に用いられる場合が多く見られます。

【植物紋】(約100種)
家紋の中で最も多く用いられています。日本では古代から植物に愛着を持ち、 和歌にも数多く詠まれ草花の文様が衣類・調度品に盛んに用いられ、のちに家紋に転じました。 逆にヨーロッパに存在する紋章は動物のモチーフが多く、日本に比べ動物と人間の距離が近かったと窺い知れます。

【動物紋】(約42種)
動物紋は植物紋に比べ数が少ないです。この中には中国から渡来した文様から転じた鳳凰、竜など想像的な動物もあります。 動物の中で最も多いのは鳥紋で、魚紋は鯉紋以外はほとんど使用されていません。 ただ魚に関連した網紋、鱗紋は用いられています。日本では仏法により肉食が禁止されたり、動物の飼育・鑑賞が罪悪と されていたため、家紋にもあまり用いられなかったと思われます。

【器材紋】(約135種)
器具紋には宗教的なもの、武具、家具、工具、楽器具、玩具、服飾具など種類は極めて多く素材として用いられています。

【建造物・営造物紋】(約16種)
この紋の中では神社関係のものが最も多く、他に家屋関係、土木関係のものもあります。

【文様紋】(約23種)
文様紋は角、菱、引両、亀甲など直線的なものと、巴、輪、花菱、唐花、木瓜など曲線で構成されたものとがあります。 また他の部類と重複する鱗、枡、輪鼓(りゅうご)などもあります。

【文字紋】(約5種)
文字紋には家紋を文字で表したものや名字からとったものが多く、吉祥的な意味をもっています。 1字を用いたものが最も多く、書体は角字形が多く見られます。 現在用いられている文字紋は800種類にも及びます。

【図符紋】(約10種)
あまり多く使用されていませんが、呪符から転じた九字、阿部晴明判などと図式で表した源氏香図、井田図などの紋があります。

【神に関係する紋】
神に関係ある動植物紋・・・鳥、鳩、葵、梶、柏、榊、梛、杉など。
神社に関係ある建造物紋・・・石畳、鳥居、額、瑞垣など。
神事に関係ある器具紋・・・鏡、剣、鈴、幣、瓶子、宝珠、折敷など。

【仏教に関係する紋】
仏教に関係ある植物紋・・・蓮、茗荷など。
仏教に関係ある器具紋・・・錫杖(しゃくじょう)、法螺(ほら)、打板(ちょうばん)など。
その他の仏教紋・・・輪宝(りんぽう)、万字、巴など。

【その他】
キリスト教紋・・・久留子(くるす)、祗園守りなど。
儒教紋・・・八卦、太極図、井田など。
禁呪紋・・・阿部晴明判11

家紋の取得方法による分類

【定紋(じょうもん)・替え紋】
家紋は一姓一家紋。一家一家紋というのが原則です。 しかし長い間には主人筋から賜ったり、敵片から奪い取ったり、妻の実家の紋を用いたりして 一家でいくつもの持つようになり、その中から名字を代表する家紋を決めておく必要がありました。 その代表された紋を「定紋」、それ以外の紋を「替え紋」と呼びます。 「定紋」は「表紋」「本紋」とも呼ばれ徳川時代には正式に幕府に届け出た紋で、その家の格式を表し 公式の行事・儀式には必ずこれを用いました。 非公式の場合に用いられたのが「替え紋」で、これは「裏紋」「別紋」「控え紋」とも呼ばれます。

【賜与(しよ)紋】
皇室や公家など格式の高いものから賜った紋のことです。 当然その紋は権威のあるもので、これを受けた者は名誉を誇り権勢を高めました。 武家における賜紋は皇室や公家の場合より多く、権威ある将軍、大名より家紋を 賜ることは一家の光栄とみなし、また与える方は忠誠を尽くさせる一助としました。

【譲与(じょうよ)紋】
「賜与紋」のような功労に対するものではなく、家名相続や結婚関係に基づいたものです。

【略奪紋】
戦によって敵の紋章を奪い、自家の家紋としたものです。 この例で有名なのが竜造寺氏が大友氏の軍勢に夜討ちをかけて破り杏葉の幕紋を奪って、 元の剣菱の紋を改めてこの杏葉紋にしたというものです。 当時、杏葉紋は九州の諸武士の憧れの紋でした。

【交換紋】
互いに家紋を交換して用いたもので、民間では多く見られました。 他に他家の紋、特に権威のある紋を許可なく勝手に自家の紋として用いることで、徳川時代に多く見られました。

【新紋】
家紋は姓氏と異なり法令もなく、家紋の使用・制作に関しては自由です。 従来の家の観念から開放された明治時代以降、新しい家紋が作られたりもしました。 こうして作られた歴史の浅い家紋を「新紋」と呼びます。 現在私がご依頼を頂き制作している家紋もこれに当たります。 ネット公開用・展示用作品に関しては、個人や家に対して作られたものではないので正式には「家紋」ではなく「家紋風デザイン」になります。

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